愛は時として狂気と化す


彼女…『本物のわたし』が言うことは

間違っていない。


だからこそ、自分が恐い。



幼い頃から…『百城の名を汚さないため』と、英才教育を受けてきた。


どこに行っても、両親に恥ずかしくない娘を

『出来の良いお嬢様』を演じてきた。


ほぼ毎日、私生活という舞台の上で

『百城のお嬢様 瑠美』

を、わたしは見事に演じきっていた。


いつしか、自分でもそれが『わたし』なんだと思うようになっていた。


でも…違った。



『わたし』は、本当は

破壊魔だった。


舞台から下りると

灰くんを傷つけて、本来の自分を解放する。



灰くんと出会うまで

ずっと…

わたしは『わたし』を殺して


生きてきた。



何か嫌なことがあるたびに

『ここから出してよ』


そう訴える彼女を、無視し続けていた。



「こんなわたしは…わたしじゃない」


そう、自分に言い聞かせていた。
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