愛は時として狂気と化す
「…何で…急に……。
瑠美は俺が嫌いなの?」
愕然とした表情で
灰くんは言った。
違う。
嫌いじゃない。
「好きよ。わたしは……
わたしは灰くんを愛してる。
愛してるけど…でも……」
でも……
このままでは、わたしはあなたを殺しかねない。
口にこそ出さなかったけれど
わたしの苦悶の表情を見て
灰くんは何も言わなくなった。
部屋を出ていくとき
「俺は…何が何でも瑠美が好きだから」
そう言って出ていった。
わたしは、部屋にある四角い三面鏡を見た。
「灰くんは…こんなわたしを…好きと言ってくれるのね」
『そう。でも、夜のわたしを見て、同じように笑顔で好きと言えるのかしら?』
鏡の中の自分が、勝手に喋ったように思えた。
けれど、違った。
「わたしは灰くんが好き?」
『もちろん。大好きよ』
わたしは、鏡に向かって喋っているのだ。
正しく言えば、心のなかの『本物のわたし』と話しているのだけれど…
どちらにせよ、周りから見れば異様な光景だ。
誰かに見られれば、精神病院行きは確実だ…。