穏やかと癒し・・・ときどき、あい・・・
「顔上げていい?」

と、孝徳の優しい声が聞こえた。

私の涙はとまらない・・・次から次へと溢れる・・・

私は孝徳を抱きしめていた手を離し、自分の顔を覆った。

「咲希・・・」

優しく名前を呼ぶ声。

それでまた涙が溢れてくる。

「咲希、ソファーに座って」

孝徳はそう言うと、私の覆う手はそのままでソファーに座らせてくれた。

「咲希」

そして、ふわぁ~と抱きしめてくれた。

「咲希」

何度も優しい声で名前を呼んでくれる。

どのくらい経ったのだろう?

私は覆っていた顔から手を離し、孝徳の首に手をまわした。

「孝徳・・・」

「顔が見たい」

と、孝徳が私から少し離れる。

「はずかしいからヤダ」

私は手に力を入れて、首にまわした手を離さない。

「咲希、さっきは俺をいじめたかったの?」

あっ・・・

「ごめんなさい。先輩に会ったって言ったら急に不機嫌になってビール飲み出すからびっくりして・・・」

「そんなの当り前だろう?先輩に会ったなんて言われたら普通じゃいられない。ずっと不安でいたんだから、先輩と再会したら、咲希はきっと・・・って思ってたから・・・」

そんなふうに思っていたなんて知らなかった。

「そんな不安にさせてたなんて知らなかった・・・ごめんなさい」

「いや、いいんだ。そんなことはもういい」

そう言って私が首にまわしていた手を解いた。

「咲希が好きなんだ。俺のこと好きになってくれて嬉しい」

そう言うと、頭を傾けた。

前にはしなかったキス・・・

軽く触れるだけのキスをしてくれた・・・

二人にとって初めてのキス・・・

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