穏やかと癒し・・・ときどき、あい・・・
「じゃまたいらしてね」

私は車の中からお辞儀した。

ご両親に駐車場まで見送って頂いて、孝徳は車を発進させた。

「孝徳どうしたの?」

先ほどの違和感が気になった。

「ん?どうしたのって?」

「なんか気になったから・・・」

「なぁ咲希」

「なに?」

「・・・ありがとう」

えっ!?

「なに?」

「さっき、聞こえてた」

えっ!?

私は孝徳を見上げた。

一瞬、こちらを見た孝徳。

「ありがとう」

孝徳はもう一度そう言うと、前を向いた。

聞かれてるとは思っていなかった。
でも聞かれて困ることじゃない。
それに私は想いを全て伝えていなかった。

「あの時、泣いちゃったから伝えたいことをまだ言えてなかった。私は孝徳と一緒にいるの穏やかで癒される。私の方こそありがとう」

「咲希はわかってないな」

前を向いたまま、孝徳は意味ありげにそう言った。

えっ!?

「俺が咲希と一緒にいると穏やかでいられるんだよ。隣に居てくれると癒されるし、まっそういう時だけじゃないけどね」

ん?

と、孝徳はそう言うと同時に信号待ちになり、ハンドブレーキを引きシートベルトを外して、隣の私に近づいて・・・

えっ!?

私にキスをした。

私はひとつひとつの行動を見ていたのに、キスをされるとは思っていなかった。

「・・っん・・・」

そんなに長くないキスなのに、 不意打ちのキスにこころを全てもっていかれた。

「可愛い」

と、ひとこと言った後、私の髪を少し撫で運転席に戻っていった。

私はあまりにも恥ずかしくて目を開けることが出来ない。

ずっと、こころをもっていかれたままだった。


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