穏やかと癒し・・・ときどき、あい・・・
駅前の近くの喫茶店という言葉が合うお店で二人は向かい合わせに座った。

コーヒーを注文した。

「はやは忙しくなってきてるでしょう?」

彼女はそう切り出した。

はや?

忙しくなってきてるでしょう?

「あっはやって言うのは早川のことね。私のこと、水沢からさわって言うから私もはやって呼ぶようになったの」

なんかとても親しく感じる。

「大変よね。経営企画部なんて・・・」

えっ!?

なぜ、まだ社内だけの正式に発表されていないことを知っているのだろう?

「私とはやは大学時代からなんとなく一緒にいて、それから付き合うようになったの。でもちょうど3年前にドイツに行くことになって・・・」

私は顔を上げる。

えっ!?

付き合うように?

えっ!?

「彼、住谷に入って彼女いないって言っていたでしょう?」

住谷に入る前に別れて、3年いないって言ってた。

「ドイツに行っている間は付き合ってないってことにしたの。付き合ってると会いたくなるでしょう?でも別れたっていうか一時的に離れたっていうか・・・もちろん、お互いに気持ちはあるのよ。この間、一時帰国した時もあなたが一緒に居たのに来てくれて、夜中まで一緒だった。彼、とても優しかった」

彼女は運ばれてきていたコーヒーを一口飲んだ。

「あなたとのこと"友達以上恋人未満"の関係って言ってたわ」

ドイツから来ていた人が女性なんて知らなかった。

知らなかった。

「戻ってくることになったの。だからはやを私に返してね。それに私の方がはやに合ってると思うわ」

私はその日どうやって家に帰ったのか覚えていない。

もう何も考えられなくなっていた。

孝徳に・・・

孝徳を信じてる。

信じてるのに・・・

女性だったなんて知らなかった。

知らなかった。

今度紹介するよ。って、どんなふうに紹介するつもりだったの?

孝徳・・・


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