穏やかと癒し・・・ときどき、あい・・・
シャワーを浴びてリビングのドアの前で中から話し声が聞こえた。

孝徳の声だ。

えっ?もう着いたの?

私がシャワーを浴びて30分くらい・・・40分くらいで来たことになる。

どうしよう・・・

リビングのドアの前で開けられずにいるのに気付いたのかドアが開いた。

孝徳がリビングのドアを開けたようだ。

「咲希、よかった。心配したんだ」

と、私に近づいてくる。

「ダメダメ。君は咲希に触れないで。俺と咲希を納得させてくれないとダメだよ」

私と孝徳の間にすかさずお兄ちゃんが入った。

「彼は近くにいたんだって。実家にはいないと思ったけど、ここしかないと思ってここを知ってる人から聞いて向かってたみたいだよ」

きっと、加奈子だ。

加奈子しかいない。

「森さんに聞いたんだ。咲希の実家を教えてほしいって言っただけだから、咲希と連絡が取れないとかは一切言ってないよ」

でも勘のいい加奈子は何かを察しているだろう。

「じゃ座ろうか?何か飲む?」

孝徳は何も言わない。

「お兄ちゃん、私はお茶がいい。コーヒー?」

私は目線を孝徳に向け、訊ねた。

「いや、俺もお茶で」

珍しい。

「もしかして、君もご飯を食べていないのか?」

お兄ちゃんが孝徳にそう聞いた。

少し疲れた顔をしている。

寝てないのかな?

孝徳は何も言わなかった。

「なんか食べる?」

「いえ・・・」

「そう。それならいいけど・・・二人して同じ感じだね」

お兄ちゃんは私たちを交互にみてそう言うと、飲み物の準備をし始める。

「温かいお茶と冷たいお茶。どちらでも好きなものを飲んで」

お盆に急須とポット、湯呑2つと冷たいお茶の入ったペットボトルとグラスが3つ。

ソファーに私の隣にお兄ちゃん、その向かいに孝徳が座った。

「咲希は最初は冷たいのでいいけど、飲みすぎるな」

シャワーを浴びた後だから、冷たいのがいいけど、身体が冷えるのであまり飲むなってことらしい。

ペットボトルのお茶をグラスに注ぎ、それぞれの前に置いた。

「冷たいのでいい?」

お兄ちゃんがそう言うと、孝徳は「はい」と、返事をして「いただきます」と、一口飲んだ。


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