穏やかと癒し・・・ときどき、あい・・・
「失礼します」

と、管理部の静かなフロアに丁寧に挨拶しながら女性が入ってきた。

目線を上げる。

棚をカウンター代わりにして、社員でも管理部以外の人は中に入って来れないようになっている。

女性は加奈子だった。

珍しい。

「近藤さん少しよろしいですか?」

「なに?急用?」

内線ではなくわざわざなのが気になる。

近藤さんは管理部の私の上司になる人。

管理部は人事・総務・経理でなるが課ではない。

なぜ課ではないのかは知らない。

私は経理に所属している。

近藤さんが呼ばれてカウンターを周り、加奈子のそばまで行く。

何かこそこそと話をして、近藤さんが私に声を掛けた。

「緒方さん、森さんが手伝ってほしいらしいからお願い出来る?」

手伝い?

何を手伝わすんだ。

「はい」

近藤さんは加奈子のお願いを断れない。

二人は同期入社で、色々と加奈子は知っているらしい。

私はカウンターを周り、加奈子の前に立つ。

「なに?」

「そんな嫌そうな顔しないでよ。コーヒー出しを手伝ってほしいだけだから・・・」

「美容部にいるでしょう?」

手伝える後輩はたくさんいるだろうに・・・

「いやいや、それは口実だから」

< 18 / 181 >

この作品をシェア

pagetop