穏やかと癒し・・・ときどき、あい・・・
「でもね、今回は違った。いつもなら笠原さんに自分から話しかけてるのに今日は笠原さんから、『なんかいいことあった?』って話しかけられた」

孝徳の不機嫌は変わらない。

笠原さんと飲み会で話したことをきちんと説明した。

「カフェでは昔話とか孝徳の話もした。そんな人いないから大切にしろ。って言われたの。何回も」

「そんな人?」

孝徳は不機嫌のまま、訊ねてきた。

「恋をしない。って言った私に恋をしたくなるように心を軽くしてくれたり、“友達以上恋人未満”の関係を続けてくれてる、そんな人いないって・・」

「咲希は俺を買い被り過ぎ。俺だって男だからね、隣で寝てる咲希をどうにかすることだって出来るよ」

私は首を横に振る。

「孝徳は例え出来てもしないでしょう?」

そう言うと、孝徳は隣にいる私を引き寄せて抱きしめた。

「咲希、少しくらい警戒しろよ。さっきも言ったろ?俺も男だよ」

そう言って、頭を傾けた。

キス・・・

しなかった。

ぎゅっと抱きしめて、

「さっき、咲希がタクシーの中に戻った時、自分がどうなるかと思うくらいだった・・・」

私は孝徳の背中に手を廻して、初めて抱きしめ返した。

孝徳がビクッとした。

「孝徳・・・今日はごめんなさい。孝徳のあんな顔もう見たくない」

「そう思うなら、行動に気をつけてください」

「はい」

お互いにクスッと笑いあうことが出来た。

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