穏やかと癒し・・・ときどき、あい・・・
コンコン

第一応接室をノックする。

「どうぞ」

専務の声が聞こえた。

「失礼いたします」

ドアを開け、お辞儀しながら応接に入る。

「わざわざありがとう」

社長と専務は隣同士に腰を下ろしていた。

「失礼いたします」

社長の前にコーヒーカップを置き、隣の専務の前にも置く。

「さすが、孝徳君の彼女だけあるな・・・」

嬉しそうにコーヒーをブラックで社長が飲み始めた。

「さあさあ、座って咲希ちゃん」

「いえ、私はここで」

私は立ったままでいようと思っていた。

「そんなこと言わずに・・・」

「今は社長と専務としてここにいるわけじゃないから、座ってくれないか?」

と、社長に言われて、「はい」と、言い仕方なく向かいに座る。

なんだろう・・・

「親父、彼女が緒方咲希さん。孝徳の彼女」

彼女ではない。

「あっ緒方咲希です。ご挨拶が遅くなりました」

と、立ち上がり挨拶する。

「いやいや、気にしないで。公也と香澄ちゃんより早く会いたいと思ってね」

公也と香澄ちゃん?

座るように促され、もう一度座る。

「公也と香澄ちゃんは孝徳の両親ね。親父と孝徳のお父さんが古い付き合いなんだ」

「そうなんですか。でも早川さんとお付き合いしてるわけではないんです・・・」

「早川さんなんて、孝徳って言ってるだろう?」

「ここは会社ですから・・・」

「そうだよね、わかった。孝徳を内線で呼んでくれる?」

そう言われ立ち上がり、受話器を取り孝徳の内線を呼び出す。

< 73 / 181 >

この作品をシェア

pagetop