穏やかと癒し・・・ときどき、あい・・・
私は安心仕切っていた。

孝徳が付き合っていないってきっと何度も言ったのだろう。

何も言われない。

でもほとんど話をしなかった社長の奥様が私に言った。

「孝徳君の大切な人ってどんな人かと思ってたの。それは公也さんや香澄ちゃんと同じような気持ちなんだけどね。今度うちに遊びにいらっしゃる時はお付き合いしているといいわね」

と、とても穏やかな口調でそう言われた。

私はそう言われて、なぜそう言ったのかはわからない。

社長の奥様を見ていたら、嘘はつけないし否定も出来ないと思ったのか・・・

私は・・・

「はい」

と、奥様の微笑みを見ながら、そう返事をしていた。

自分でもなぜなのかわからない。

でも奥様の微笑みを見ていたら、自分でも穏やかに微笑んでいるのがわかった。

それが"素直な気持ち"だと思わずにはいられない。

このやり取りをみんなが聞いていた。

隣で孝徳も聞いていた。

でも誰一人として何も言われなかったことが、私の中で心温まる気持ちになれた。

私の気持ちを大切にしてくれているのだと思えてとても嬉しかった。


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