穏やかと癒し・・・ときどき、あい・・・
孝徳の家で晩御飯を一緒に食べて、それから勉強。

スケジュールでは昼間も勉強だった。

それをさぼった私は昼間の分を取り戻すかのように過去問をひたすら解いていた。

「はい、コーヒー」

コーヒーの入ったマグを置いてくれた。

「ありがとう」

その時、孝徳のスマホが鳴った。

いつもマナーモードにしてるのに・・・

と、思ったけど、孝徳はすぐに電話に出た。

「はい」

誰だろう?

一緒にいる時に電話がかかってくるなんてあんまりない。

基本、電話はあんまり好きじゃないらしい。

「おおっ帰ってきたのか?・・・今から?・・・お前は突然過ぎるんだよ・・・」

誰だろう?

孝徳の交友関係をあまり知らない。

休みの日はたいてい二人で過ごしているし、竜二さんと麻里子に会ったくらい。

「・・・ちょっと待って・・・」

と、電話の相手にそう言うと私に目を向けた。

「大学の時の友達から飲みに行こうって言われた。行ってきてもいい?」

と、わざわざ私に聞いてくれる。

「うん。大丈夫だよ。じゃ私帰るね」

そう言って、勉強道具を仕舞う。

「いや、帰らなくていいよ」

そう言うとスマホを耳に当てる。

「いいよ。じゃ30分後な」

と、言い通話を終了した。

「帰らなくていいよ。ここで勉強してて」

出かける準備の為にリビングを出た。

戻ってくると、部屋着から普段着に着替えていた。

「2時間・・・3時間くらいでは帰ってくるから・・・ちゃんと勉強してろよ」

今が9時。

今日中には帰って来るかな?

「あっドイツに仕事で行っててたまに帰って来るんだけど、帰って来ると飲みに誘ってくる。今日は勉強しててほしいから連れていけないけど、今度紹介する」

孝徳はきっと私が誰?って思ってることをわかっているのだろう。

そう教えてくれた。

「どうした?」

と、玄関まで見送りに出た私の顔を覗き込んだ。

「えっ?」

「なんか寂しいって顔してるから・・・俺がいなくて寂しい?」

さらに覗き込んでくる。

急に恥ずかしくなった私・・・

でも・・・

「・・・さみしい・・・」

自分でもびっくりするくらいの言葉を言っていた。

「そんなこと言われたら出かけられないだろう?」

と、孝徳はぎゅっと抱きしめた。

ドキドキしてるのが自分でもわかる。

言ってしまいたいくらいの想い・・・

でも今はダメだよね。

「じゃコンビニのスイーツね」

と、軽く抱きしめ返して私はそう言った。

「了解。じゃ勉強頑張れよ」

孝徳はもう一度ぎゅっと抱きしめて離し、手を軽く上げて、玄関を出て行った。

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