星月夜
「……反論しないんだ」
しばらくの沈黙の後、滝沢先輩の唇が再び重ねられた
「…やっ!…違っ……せん……」
反論しようと唇を開こうとすると、その隙をついて滝沢先輩の舌が侵入してくる
「……やっ……!先…輩…やめ……」
息が苦しくなり、先輩の体を必死で押し戻そうとするのに、先輩はぴくりとも動いてくれない
逃げれば逃げるほど執拗に追いかけられ絡まれる舌に私の呼吸は上がり朦朧とする意識
「……ふっ……先輩……」
苦しさから目をギュッと瞑ると涙が頬を伝っていった
「七瀬」
さっきの怒りを含んだ声でもなく、いつもの意地悪な声でもない
とても優しい声にゆっくりと目を開けると
目の前には、さっきの怒りの欠片も微塵も感じられない先輩の顔
何だか、泣いてる見たいで私はその頬に手を伸ばした
手が触れた直後、それが合図になったかの様に再び先輩の唇が重ねられた
「七瀬、ごめん………」
掠れゆく意識の中、何度も滝沢先輩の声を聞いた
久しぶりに感じる誰かの温もりは、ささくれ立っていた私の心を優しく撫でてくれた