星月夜
「七瀬、話し聞いて」
嫌だ
聞きたくない
「帰って下さい……。もう嫌なんです…過去に振り回されてる自分も、一人で眠れない夜を過ごすのも……
だからもう放って置いて下さい」
「七瀬、お願いだ………。これが最後でもいい。話し聞いて」
「嫌ッ!!」
「七瀬!」
私は滝沢先輩に抱き締められた。
力強い腕に抱き締められて、微かに香る彼の匂いが私の決断を鈍らせていく
一方で冷たい布が私の顔に貼り付いて気持ち悪い
私は滝沢先輩の身体をそっと押し戻す
「風邪……ひきますよ」
視線を合わせないままそう言って玄関の扉を開け部屋の中に戻る
もう滝沢先輩は私を無理矢理引き戻そうとはしなかった
私はお風呂場に行きお湯を張った後タオルを持って玄関に戻った
ドアを開けるとさっきと同じ位置にしゃがみ込んだ滝沢先輩の姿
私は滝沢先輩にタオルを手渡し中に入る様に促す
「いいのか……?」
「いつまでもそこに居られたらご近所の方に迷惑です」
そう告げると滝沢先輩の表情がふっと揺るいだ
私は滝沢先輩にお風呂を勧めて濡れた服を持って部屋を出た