星月夜
「先輩、髪ちゃんと乾かして下さい……冷たい」
さっきから先輩の濡れたままの髪から雫がポタリポタリと私に落ちる
「あぁ、ごめん」
やっと解放された私は着替え始めた先輩に背を向けキッチンに立った
大体、彼女でもない女の前で堂々と着替えるって…どうなの?
女として意識されてないとか…?
いや、それはないか。
女として見てないなら普通抱いたりしないよね…
コーヒーを淹れて戻ろうと振り返ると先輩がじっと私を見ていた事に気付き顔を逸らした
「それで、話しって何ですか?」
「……バイト、辞めたんだな。見合いするの?」
「父との約束だったんです。大学を休学する時に、1年以内に復学出来なければ就職するって。
けど、パパの会社の取引先の人の息子さんが私の写真を見て気に入ってくれたそうでお見合いする事になったんです」
私は淡々とそう告げた
これはもう決めた事だから、その気持ちが揺らぐ事はない
例え先輩に何て言われようと
「大学には戻らないの?」
「戻らないんじゃなくて、戻れないんです」
「え?」
不思議そうに顔を傾ける先輩。意味が分からないと言いたげに眉をしかめる