星月夜



音の正体は先輩が打つノートパソコンのキー操作の音だった。

先輩はベッドの前に置いてあるテーブルで私の方を向いていた


視線を察知してか先輩がパソコンから視線を上げる


「起きたか?」


小さく頷くと、先輩は立ち上がりテーブルの上にあった体温計を差し出してきた


「熱計ってみろ。飯は食えそうか?」


「……いらない、……食欲ない」


滝沢先輩はちょっと困ったように笑うと体温計を無理矢理私に握らせてキッチンに向かった



ベッドから起き上がり、ベッドサイドの床に座り込む。


いつもの私の定位置だ。



体温計を脇に挟みながら目の前の小さいテーブルに処狭しと並んでる書類の束をぼんやり眺めてた



体温計がピピッと終了を告げると取り出した途端に私の手からすり抜ける



「8度3……。結局あるな、病院行くか?」


「いい、要らない。寝てれば治るから……」


そう言ってベッドに戻ろうとした私の腕を掴んだ先輩は座れと目で合図する



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