大和の風を感じて~運命に導かれた少女~【大和3部作シリーズ第1弾】
翌日、佐由良が倉庫の片付けを終えて戻って来た時の事。
胡吐野(ことの)と同じ宮仕えの伊久売(いくめ)が何か話しをしていた。

「2人供何かあったの」

2人は佐由良がやって来た事に気付き、彼女に歩み寄った。

すると伊久売が彼女に答えた。

「昨日雄朝津間皇子(おあさづまのおうじ)がこの宮に来られたんだけど、しばらくここに滞在されるみたいよ」

「雄朝津間皇子?」

(一体誰なんだろう)

佐由良は不思議そうに思っていると、胡吐野が答えた。

「前の大王の第4皇子で、今の大王の弟になるわ」

「え、まだ皇子がいたの?それは知らなかった」

吉備海部で伝わっていたのは瑞歯別皇子(みずはわけのおうじ)までだった。
他にも皇子がいてもおかしくはないが、まだ幼いか身分が低いかのどちらかだろう。

続けて伊久売が答えた。

「雄朝津間皇子はまだ11歳で、磐之媛(いわのひめ)が産んだ末の皇子よ。佐由良あなたよりも若いんだから」

「へぇー磐之媛様の末の皇子ね。それは知らなかったわ」

(磐之媛は結構たくさん皇子を産んでいたのね。本当に同じ女性として凄いと思う……)


「それで、その雄朝津間皇子がどうしてこの時期に来られたの」

最近は物騒な事件が続いていた為、この若宮内でも、割りと見張りが強化される事態になっていた。
なので、そんな中で来るとなると佐由良も少し不思議に思えた。

「特に用があった訳ではないらしく、どうも久々に兄の瑞歯別皇子に会いたかったみたい。まぁ、この皇子様が謀反を起こすとは考えにくいし……」

伊久売がそう答え、胡吐野も「そうそう」と頷いた。
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