大和の風を感じて~運命に導かれた少女~【大和3部作シリーズ第1弾】
その翌日から、雄朝津間皇子(おあさづまのおうじ)は時々佐由良に話しかけるようになった。

彼女自身も、自分よりも少し年下の皇子とは思いの外話しやすく、直ぐに打ち解ける事が出来た。

(雄朝津間皇子は瑞歯別皇子と違って、本当に素直で優しい皇子ね……)

「でも、兄上が佐由良に対してあんなにムキになるのはちょっとびっくりだったなー」

雄朝津間皇子は、先日の佐由良との対面時の事を話していた。  

「でも佐由良が僕の事を庇ってくれて本当に嬉しかった」

彼は本当に嬉しそうに佐由良に言った。

「そんな滅相もございません。私はただ思った事をその場で言っただけですから」

彼女にとってはどちらの皇子もしっかりとお仕えするべき存在である。 
だから二人の仲が悪くなるなんて事はしたくなかった。

「あ〜あぁ、兄上も早く妃の一人でも決めてくれたら少しは丸くなるのかな。去来穂別(いざほわけの)の兄上がそう言ってたし」

「まぁ、大王がそんな事言われてたんですか」

(きっと大王も、瑞歯別皇子の妃決めの事で、結構悩まれてるんだわ……)

「うん、そう。でも瑞歯別(みずはわけ)の兄上の場合、それについては余り関心示さないんだよね」

「確かに瑞歯別皇子(みずはわけのおうじ)は、政治的な事ばかりされていて、どこかの姫の元に行っているなんて話し聞いた事がないですね」  

これは佐由良も実は意外に思っていた。
彼は見た目も綺麗で、常に女性の目を引いていた。そして何より大和の皇子と言う身分である。なので女性なんて選びほうだいのはずだ。
にも関わらず、そう言った女性との噂は全く聞こえて来ない。

「まぁ、今まで全く無かった訳でも無いみたいだけどね」

(皇子に気に入られたいと思っている娘達は多いみたいだけど。中々上手くいかないものね)

「瑞歯別皇子もご自身の立場をとても良く理解されてます。なのでいずれは、どこかの姫を娶られますよ」


(ただあの皇子が、どこかの姫と一緒になるなんて、実際には全くイメージつかないわね。)

< 55 / 106 >

この作品をシェア

pagetop