大和の風を感じて~運命に導かれた少女~【大和3部作シリーズ第1弾】
「確かに物は良いみたいだけど、そんなに珍しい物ではなさそうね……」

佐由良は再度その首飾りを眺めて言った。

「とりあえず、それは貴方に持たせるわ。麻日売(あさひめ)の形見だと思って」

「そうね、お母様の形見なんて無いと思っていたし。これは頂いていきます」

そもそも、母の顔すら覚えていない有り様で、懐かしさとか母のぬくもりなども知らずに育ったのである。
でもそう言ったものに憧れはが無かった訳では無い。やはり母親と言う存在を恋しく思っていた。

「じゃあ、佐由良気をつけて帰るのよ」

黒日売は心配そうに佐由良を見送った。

「ええ、叔母様本当に今日は有り難う」

そう言って佐由良は黒日売の元を離れ、自分の家へと向かった。
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