俺様生徒会長に鳴かされて。

「こんな気持ちになったの初めて。

おとうさんの前でしか歌ったことがなかったし、

それで、いいと思っていた…」





あんな景色が見られると、知るまでは…。





「とても、いい景色を見たの。

あの景色を見た瞬間、

わたし自身も生まれ変わったような気がした…」





わたしは胸底から込み上げる喜びをいっぱいにこめて、

彪斗くんに笑った。





「彪斗くんのおかげだよ。

わたしを導いて、背中を押してくれなかったら、

ひとりでは絶対に見れない景色だった…」





…そっか。


と、小さくつぶやいて、彪斗くんはわたしの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。





もう…

ただでだえ揉みくちゃになってボサボサになってるのになぁ…。



結び直さなきゃ、と思ったけど、



する、



と、ヘアゴムが取られて、

やさしい手つきで、三つ編みをとかれていく。



「彪斗くん…?」


「じっとしてろ」



ふんわりと髪を持ち上げ、彪斗くんはやさしく頭を撫でてくれた。



どう…したの?



と聞こうとしたとたん、

メガネが外されて、彪斗くんがぼやける視界に消えた。





「びっくり、だよな」







「こんなことするつもり、まったくなかったのに。

閉じ込めて、俺のそばにいさせるだけで、いいと思ってたのに…」





ぎゅう





不意に、抱き締められた。
< 207 / 269 >

この作品をシェア

pagetop