俺様生徒会長に鳴かされて。



前に、湖で抱きしめられた時とはちがう、



包み込むような、やさしい抱擁。



とく、とく…



って、

不思議なくらい、わたしの胸は落ち着いていた。



まるで、ちっぽけな小鳥になったように、彪斗くんの胸の中で安らいでいた。





硬い腕に頬を寄せたまま見上げると、

メガネがなくてもわかるくらいのすぐそばで、彪斗くんの綺麗な顔と目が合った。



その顔は、これまで見たことがないくらいに、

困ったような、自信なさそげなような表情を浮かべていた。





どうしたの…

彪斗くん…。





頬に感触を感じた。

ちょっと冷えた彪斗くんの指が触れてきた…。



「ほんと、可愛いよな」



「……」



「世界一可愛くて…臆病で…守りたい、俺の小鳥。

おまえを他のヤツなんかに、見られたくなかった…。

けど、

おまえがそやって前に進みたいって言うなら…

新しい景色を見たいって望むなら…

そうやって、心の底から笑ってくれるなら…

おまえ、今日からずっとこの姿でいろよ」



「え…でも…」





ブスでいれ、って…。



メガネも三つ編みも、彪斗くんの命令でしょ…?





「もういいんだ。

だせぇメガネなんかもうかけるな。

コンタクトにして、髪もおろして、

寧音にみてもらって、今日みたいな格好をしろ。

そうすれば、おまえをけなすヤツなんかいなくなる。

おまえの自信を奪うヤツなんかいなくなる」





彪斗くん…。




彪斗くんの手が、わたしの頬を包み、



そして、



言い聞かせるように続けた。
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