俺様生徒会長に鳴かされて。
「いいか、小鳥。
おまえに敵うヤツなんてどこにもいない。
おまえは生まれながらの、最高の歌姫だ」
『ここを去るのは、君が大好きだったお父さんが君に宿した想いをも捨てる、ということになるんだからね?』
あの時、須田さんに言われた言葉。
どうして今、思い出すんだろう。
今ならその言葉にはっきりと答えを言えるような気がした。
手放したくない。
大好きな歌を。
裏切りたくない。
お父さんが託してくれた思いを。
そして、
こんなに切ない声で導いてくれる、彪斗くんの思いを―――。
よし、エラいぞ。
そう褒めてくれるかのように、彪斗くんの目が、やんわりと細まった。
そして、
頬を包んでいた指が、そっと、わたしの唇をなぞった…。
どきり
と、胸が高鳴る。
彪斗くんの目は、いつしか元の宝石のような輝きを取り戻していた。
わがままそうな黒々とした目で、
じぃっと物欲しそうに見ている。
わたしの唇を―――。
もう、鼓動も感じない。
息が、止まる。
彪斗くん…
彪斗くん…!
けど、
振り切るように、彪斗くんはわたしの身体を離した。
その瞬間、わたしは胸がしゅんと縮むのを感じた。
もしかして、わたし、今
がっかり…した…?
彪斗くんは立ち上がると背を向けたまま言った。
「そろそろ帰るか」
「ん…」
おもむろに差し出された手を握って、
わたしは彪斗くんの顔を見ないように、少しさがって歩いた。