俺様生徒会長に鳴かされて。
「でねでね、まだどこの事務所にも所属してないみたい、って教えたら「ぜひウチにいれろ」ってがっついてきてんだけどさー。
ねー興味ある?うちの事務所アイドル系強いからそんなに苦労はさせないと思うけど―――
きゃぁあ!」
「おい優羽!」
ヒナタちゃんが叫んだのは無理もない。
いつの間にか来ていた彪斗くんが、わたしたちのそばで仁王立ちになっていたから。
「なに喋ってんだよ。
んな暇あったら、さっさと来い」
「ご、ごめんなさい…」
「きゃー!彪斗サマが間近に!
握手してください、てか曲くださいっ」
「うっせぇ!
ほらとっといくぞ」
「あっ…!
じゃ、じゃあねヒナタちゃん」
「うん、また明日ね」
笑顔で見送ってくれたヒナちゃんを後に、わたしは彪斗くんにずんずん連れて行かれた。
「ったく、誰だあのおしゃべり女は」
「寧音ちゃんのお友達のヒナタちゃんだよ」
「寧音の?通りで…」
今日は寧音ちゃんがお仕事で午後に早退してしまったので、わたしはひとりだった。
なので帰りは彪斗くんと一緒に帰ることになっていた。
寧音ちゃんが忙しい時は、最近はこうして彪斗くんと一緒に帰るのが日課になっていた。
けど、わたしにはちょっとこれが恥ずかしい。
彪斗くんの手は、わたしの手を堂々と握っている。
そうやって校舎の中を歩くと、嫌でも人の目線が集まってしまう。
ほら、今だって女の子のこわい目線…。
だって、彪斗くんはすごいカッコいいだけでなく、生徒会長につくくらいの、ものすごい売れっ子。
対してわたしは無名の一般人。
歌を歌って行こうって決めたものの、まだはっきりとした芸能活動を始めたわけじゃないんだもの…。
まるで王様と一般庶民くらいのちがい。
無理もないよね…。
けど彪斗くんはそういうことはお構いなしみたい。
余裕な態度で、握っているわたしの手を見せつけるように、ずんずん歩いていく。