お婆ちゃんは魔法使い
あちこち記憶が繋がらないが
ゆっくりと思い出しながら
あの日の興奮を蘇らせなければ・・・と思いながら
幸介の作文を書かせることは難しくない。
あの感激を孝介にも味わわせれば
きっと作文が書けるだろうと密かに自信を蘇らせた。
薄れた思いをひとつずつ繋ぎ合わせながら
一行ずつ自分の書いた作文を話し始めた。
あの時の ひと駒・・ひと駒の興奮が熱く体を走った。
「うわああ~~聖火が見えたよ。」
と言う声に並んで居た行列がどっと崩れたんだよ。
聖火に近寄ろうとした時だった。
「危険だから近寄っては駄目っつ!!」と言う声がした。
みんなはその声に重なるように
押し合いながら立ち止まったんだよ。
お婆ちゃんはその時の風景が鮮やかに蘇り興奮しながら
記憶を再現した。
お婆ちゃんの顔をじっと見て居た孝介は
吸い込まれるように大きな眼を開いて話を聞いて居た。