お婆ちゃんは魔法使い
孝介の反応には少しも応えず
黙って紙に書き続けた。
孝介が何時逆らうかが楽しみだった。
お婆ちゃんはお話を続けた。
「するとボールが隣の庭に転げ落ちたんだよ。
慌てた聡君が大きな声で
「あらあ~~どうしよう。もう野球が出来ないやあ~。
とがっかりして塀の脇に腰を下ろしてしまったんだ。」
孝介の動きに応じないお婆ちゃんの話を
じっと聞いて居た 幸介は 急に大きな声で言った。
「お婆ちゃん違うよ。違うよ。昨日野球なんかしないよ。
聡君の部屋で星空のビデオを見たんだよ。
お婆ちゃんが透けて見えるなんて嘘じゃないか。」と
お婆ちゃんの持って居るボールペンを取り返した。
もうお婆ちゃんは嬉しくて飛び上がりそうだったが
何食わぬ顔をして
「しめた・・・」と呟いた。
これだ・・これが孝介の本当の記憶を蘇えさせる力だと想った。
孝介のこの言葉に書ける・・絶対書ける・・
この記憶があれば絶対かけると大きな自信を持った。