イケメン侯爵様とお試し結婚!?
次の日がやってきました。
支度をする、と言って自分の部屋に篭るアマルダ。
ラフィアはさも私が準備をしているのを手伝っているようにしながら、他の侍女を部屋に近付けないようにしてくれています。
その間に、あらかじめ用意していたドレスに着替えました。
アマルダが着る服は綺麗なドレスではありません。
あちらこちらに洗っても消えない泥の染みがついた、それはアマルダの"ドレス"。
髪型も、ただ一つに結んだだけ。
化粧なんてしません。
そのドレスに身を包んだ後、部屋から出られない時に抜け出す際にいつも使っていた紐、これを窓から垂らし、するすると外の庭へと降ります。
アマルダの部屋は正面とは逆の位置にありました。
そのお陰か、抜け出してもばれる事はなかったのです。
部屋から抜け出すと、見つからないように注意を払いながら、馬小屋へと向かいます。
馬小屋は屋敷の脇にあり、正面の入口が見える所に位置しています。
馬小屋へ入ると、アマルダは愛馬であるルルを撫でながら、声を掛けました。
「ごめんね、ルル。こんな事に巻き込んじゃって。でもこれは私の将来に関わるの。嫌だろうけど、手伝ってね」
その言葉にルルは、軽くヒヒンと鳴きました。
「さあ、いよいよよ」
馬小屋に身を潜めながら、そのときが来るのを静かに待っていたのでした。