イケメン侯爵様とお試し結婚!?
「・・・そういえばさ、アマルダが見た悪い夢ってなんだったの?」
「え?」
いきなりのヴァン様の問いかけに、ドキリとしてしまいます。
「いや、アマルダがあんなになるくらいだからさ。余程の内容だったんだろうな、と思って」
「そ、それは・・・・」
アマルダは言葉に詰まります。
自分の過去の嫌な事。
忘れたい過去。
それが夢に出てきた、なんて言いたくない。
「ごめん」
何も語らないアマルダに、ヴァン様が思わず謝ります。
「・・・・っ」
「・・・言いたくないなら、いいんだ。ごめん。思い出したくなかっただろう?」
俯くアマルダにそういうと、やさしく頭を撫でてくれたのでした。
暖かくて、大きな手。
安心して、それでいて切なくて。
自然とアマルダの瞳から、涙が溢れていきます。
「ごめ・・・ごめんなさ・・・」
止めたくても止められない涙。
その涙が流れるように、自分の嫌な記憶も流れていってしまえばいいのに。
ヴァン様はゆっくりとアマルダの頭を撫でながら、その姿を無言で見守っていたのでした。