あの夏〜Short Story〜
「美月、はぐれないでよね?」
『はぐれないない!小学生でも無いんだから〜!』
そう言って頬を膨らますと、
「可愛い〜!その癖可愛すぎる〜!」
って言って頬をつねってくる。
『早く行こっか!』
そう言って夏祭りの会場に入ったものの…
『ひ、人が多い…』
「当たり前だけど、酔いそうなくらい多いよね…」
『綿あめ食べたいな〜…ねっ、茉央!ってあれ!?茉央〜?』
少しよそ見してただけなのに、茉央がいない…もしかして会場着いた瞬間にはぐれた?
…あり得ない、認めたくない!…じゃなくて探さなきゃ!
…でもどこ探しても茉央は居なくて、何故か下駄を履いてきたせいで足は擦り剥けるし…最悪…
「…んね、大丈夫か?」
『へ?は、はぁ…大丈夫』
「大丈夫じゃなさそうだけど…あのベンチ座ろっか」
そう言って同い年くらいの男の子が、私の肩を持って言ってくれた。
最初は警戒したけど、それ以上に茉央が居ない心寂しさと擦り剥けた痛さがあって、もうどうでもよかった。
「はい。どうすることも出来ないけど、バンドエイド一応貼っておいたから。…で、お前なんでこんな擦り剥けた訳?」
『友達と着いた早々はぐれちゃって…必死に探してたらこうなってた、かな。』
ヘヘヘッと苦笑いした。
「本当に大丈夫かよ?俺友達待たせてるから行くけど、探し回るより一定の場所にいた方がいいかもよ?」
『うん、ありがと…』
「じゃ俺行くわ」
そう言って立ち上がって、歩いて行こうとしてた…ら振り返って
「俺は智-さとし-お前は?」
『あっ、えっと…美月!』
「美月か…いい名前だな!じゃあ」
そう言って今度は本当に去って行った。智くん…か、また会えたら良いな。