俺の彼女が照れないんだけど。
__思えば、荘士が。あの荘士があんなに必死になっている所を俺は初めて見た。
「なぁ、荘士。」
「んぁ?」
「お前、漆原に一目惚れしたのいつだっけ」
「…何、いきなり」
休日。
俺と荘士は、予備校が休校になった為、図書館で勉強していた。
ふと思い付いた疑問を、赤本片手に問題を解く荘士に尋ねた。
予想通り、手を止めた荘士は怪訝そうな、若干不機嫌そうな顔をして俺を見た。
「いや、なんかさ。
あの頃のお前って相当必死だったよなーと思って。」
「まぁ。全く相手にされてなかったし。」
「そういやお前も随分変わったなー」
「うっせーよクソ非リア」
「…もう慣れたから突っ込まないよ。」
手元に置いている缶コーヒーを一口飲んで、荘士は少し遠い目をしながらぽつりと呟いた。
「初めて見たのは、入試試験の時で、藍はそん時もずっと面倒臭そうな顔してたから、最初は何だよコイツって思ってた。」
「入試試験の時からかよ」
「あの時は、ただ普通にそういう奴も居るんだって思ってただけだよ。
で、まぁそこからはお前も知ってる通り」
「知ってるって…じゃあ、一目惚れしたのは入学式って事か?」
荘士は声を出さずに小さく頷いた。
そしてそのまま、後ろのベットに凭れかかるようにして背伸びを一つして、ニヤッと笑った。
「まぁ、実は入学式の時から一目惚れしてましたなんて。絶対藍には言ってやらねぇけど。」
「…(なんかカッコいいな!コンチクショウっ!)」