まどわせないで
 女?
 わたしも女なんですけど!
 女!?
 なにあれ!?
 すごい意味深な笑み残していった。
 如月さんが、女のひとのところへ行ったからって、別にわたしには関係ない……。
 関係ないはずなのに、気持ちが落ち込んでいくのはどうしてなんだろう。
 小麦が玄関に立ち尽くしていると、ドアが開いて帰ったはずの陸が戻ってきた。

「いい忘れた」

「な、なに?」

 再び帰ってくるとか心臓に悪い。

「明日の土曜日、予定あるか?」

 えっ!?
 ドキリと心臓が跳ね上がる。

「な、ななな」

 もしかしてデートのお誘い!?

「彼氏もいないんだから、暇もて余してるか」

 なんですと!?

「明日、うちの社長の誕生日パーティーに連れてってやる」

 パーティー!?

「日中仕事あるから、直接会場のホテル近くの駅で待ち合わせだ。携帯の番号教えろ」

「ちょっと待っててください」

 言われた通り、急いでスマホを持ってきた小麦はいわれるままに、赤外線通信で連絡先を教えた。

「明日は地味な格好じゃなくて、ドレスアップしてこい。いま玄関に出てるような、ローファーじゃなくて、ちゃんとパンプス履けよ。持ってるだろ?」

「パンプス? いちようあるけど、でも、わたしパンプスは――」

 ヒールがある分、高さがプラスされる。余計背が高くなるパンプスは履きたくない。
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