まどわせないで
「俺はお前より大きいだろ。余計な心配するな。並んで歩けば様になる」

「でも」

「お前、身長いくつだ?」

「……170、くらい」

「余裕。俺は185だ。大麦がパンプスをはいたとこで抜かされる高さじゃない。わかったか?」

「……わかり、ました」

 表情は明らかに納得していない。
 それでも、自分がいったことを覆すような小麦ではなかった。

「待ち合わせのホテルはメールで地図送る。じゃ、明日な」

 そういって陸は去っていった。
 女のところへ。
 立ち尽くしたまま、手に持っているスマホをぼんやりと見る。

「………」

 わたし、素直すぎない?
 携帯の番号、求めらるまますんなり教えちゃうし、明日のパーティー? だって、なんだかんだ行くことになってる。
 それは確かに彼氏いませんよ。だからって暇をもて余していると思われてるのは、なんかいやだ。わたしだって、友達とショッピングに出掛けたり、ひとりで駅前をブラブラしたり自分の時間を有効活用している。
 明日の予定はまだ、決めてなかったけど。

 パーティーに連れてってやる。
 って、偉そうな態度で、本当は腹をたてるところなのに、どうしてだろう。
 一緒に出掛けることが、ちょっとだけ、ほんとうにちょっとだけ、楽しみ。
 如月さん、いつも一方的で、とまどいながら結局振り回されてるけど、これでいいのかな……。
 絶対向こうはわたしのこと、都合のいいやつだとしか思ってない。
 現に、わたしの連絡先を聞いたくせに、自分のは教えてくれなかった。
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