まどわせないで
「あの、現在、夕飯食べてまして」
「後で食え。早く出ろ」
やっぱり怖いよ……!
わたしの何が怒りを買ったの?
盗み聞き? ラーメン? 蚊? 壁ドン?
なに? なんなの? わからないよ。
テンパった小麦は恐怖に体を震わせて涙ぐむ。
でも、このまま籠城していつか玄関口とかで会ったら、そのときこそなにされるかわかったものではない。
小麦は諦めて玄関の鍵を開けた。
「な、なんでしょう?」
おずおずと小さく開けたすき間に、大きな手が滑り込んできてドアを大きく開け放った。
その勢いに仰け反った小麦がよろよろとその場にへたり込む。
まず視界に入ってきたのは大きな靴だった。ついで長い足。引き締まった腰、均整の取れた体、面長のシャープな輪郭、髪は黒のナチュラルショート。視線を顔に戻し、目が離せなくなった。
「なんだ。見とれてるのか?」
「だって、格好い……」
蜂蜜の声に促されて、思ったことを正直に口にしそうになって、慌てて首を振る。
「み、見とれてないです、はい」
へたり込んだ小麦に身を屈めるようにして如月が近づく。如月の後ろに電気が隠れて、小麦に影がかかる。
「本当は格好いいっていおうとしたんだろ?」
「………」
余計なことを口にしないよう、口もとを引き締める。
「後で食え。早く出ろ」
やっぱり怖いよ……!
わたしの何が怒りを買ったの?
盗み聞き? ラーメン? 蚊? 壁ドン?
なに? なんなの? わからないよ。
テンパった小麦は恐怖に体を震わせて涙ぐむ。
でも、このまま籠城していつか玄関口とかで会ったら、そのときこそなにされるかわかったものではない。
小麦は諦めて玄関の鍵を開けた。
「な、なんでしょう?」
おずおずと小さく開けたすき間に、大きな手が滑り込んできてドアを大きく開け放った。
その勢いに仰け反った小麦がよろよろとその場にへたり込む。
まず視界に入ってきたのは大きな靴だった。ついで長い足。引き締まった腰、均整の取れた体、面長のシャープな輪郭、髪は黒のナチュラルショート。視線を顔に戻し、目が離せなくなった。
「なんだ。見とれてるのか?」
「だって、格好い……」
蜂蜜の声に促されて、思ったことを正直に口にしそうになって、慌てて首を振る。
「み、見とれてないです、はい」
へたり込んだ小麦に身を屈めるようにして如月が近づく。如月の後ろに電気が隠れて、小麦に影がかかる。
「本当は格好いいっていおうとしたんだろ?」
「………」
余計なことを口にしないよう、口もとを引き締める。