まどわせないで
「う、うーん、ちょっとした口論」

「口論ねぇ……」

 問題が大きくならないように控えめに伝えたが、杏子の口調から納得していないことがわかる。

「まぁいいわ。でも一言だけいわせて。冬里に気をつけて。小麦のこと聞き回ってたから少し気になって。杞憂に終わればいいんだけど」

 お礼をいい、また再会を約束したふたりは通話を終えた。
 同窓会の会費、如月さんが払ったくれたんだ。
 そんなこと一言もいってくれなかったのに。
 あとできちんとお礼をいってお金返さないと。

 今日の夜ご飯は少し豪華にしてみようかな?
 メニューを考え始める小麦に幸せそうな笑みが浮かぶ。そんなところへ、スマホからメール受信を知らせるメロディ。
 開くと、如月さんからだ。

『しぱらく夕飯いらない』

 え。
 夕飯いらない?
 どうしたんだろう。
 小麦は疑問を感じながら返事を送った。

『用意しなくていいんですか?』

『今週はイベントで地方。しばらく戻らない』

 地方に行くから忙がしい?

『分かりました。気をつけて行ってきてください』

 そっか。
 如月さんとしばらく会えないんだ。
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