わたし、式場予約しました!
 あのとき、結局、一真はなにもしなかった。

 いや、なにもとは言わないが。

 自分が嫌がったら、引いてくれた。

 少し困った顔で。

 そのときの一真の顔は好きだと思った。

 本当に大事にしてくれてるんだな、と感じられたから。

 だから、和歩の方がちょっとたちが悪いような気はしている。

「和歩には、ぐいぐい引っ張ってってくれるような、強引さがないからねえ。

 あの苦労知らずの、エリートのおぼっちゃまは」

「佐野先輩も、ほぼ同じ条件なのに、なんであんなに性格が違うんだろうね」

「生まれつきですかねえ」

 女三人、首を傾げた。

 里たちの歳になっても、男は不可解な存在のようだった。

 だが、男たちにとっての女もまた、同じことなのだろう。
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