わたし、式場予約しました!
優しいお母さんたちに引き取られてからも、夕餉の匂いがしてくる頃になると、時折、寂しさがこみ上げた。
里と手を繋いで歩いた買い物帰りの道。
台所に立っていた里。
いろいろ思い出されて、泣けてきた。
あまり家に居なかった父親のことは、薄情にも、ほとんど思い出さなかったけど。
だから、わかったのだ。
里がずっと自分大事にしてくれていたこと。
里はいつも、カラッとしていて、自分本位で。
だから、離れてみて、初めて、里が自分に注いでくれていた愛情がわかったというか。
だが、それでも、愛人と出て行った里について行きたくはなかった。
それに此処には、和歩が居る。
「瑠可、これ、読みなよ」
そう言って、膝を抱えていた私に本を差し出してくれた和歩。
そうか。
あのときからか、と思う。
和歩が私に本を貸してくれるようになったのは。
あのときからずっと、続いてたんだ――。