わたし、式場予約しました!
 まるで、パルテノン神殿のような祭場には、海風が吹き渡り、真夏なのに、心地よい。

 お盆にあるという迷惑この上ない式なのに、みんな来てくれていた。

 共にバージンロードを歩く父親は、二、三歩も行かないうちに、涙ぐむ。

 つられてこちらも泣きそうになった。

 実の親でないだけに余計にだ。

 実の父親はというと、何故か、席にも着かずに、自慢のカメラで激写している。

 お父さんは、この役目を実の父に譲ってくれようとしたようだが、もちろん、断ったようだった。

 此処まで瑠可を育てたのは、貴方だから、と。

 それはいいが、式場のカメラマンより、張り切って撮影してくれているので、なんだか、お父さんより目立ってしまっている。

 麻美先輩はいつものように綺麗で、ボーイッシュな眞紘も今日はドレスアップしているのが、意外に似合っていた。

 しかし、祭壇の前に居る肝心の花婿が、何故か、いつもの黒い制服を着て、ネームプレートをつけている。

 自分の式も自分が担当して取り仕切る気かっ、と思ったのだが、誰もそれに疑問を呈していないようだった。

 綾子の側を通るとき、今日はドレス姿の彼女が、
「瑠可さん、綺麗よ」
と言ってくれた。

 嬉しくなる。

 彼女もまた、満足げに微笑んだ。

 父親から一真に引き渡され、瑠可は牧師の方を向いた。

 美しい花々に彩られた式場も青い海も、夢に見たバリの挙式風景に似ている。
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