わたし、式場予約しました!
 いいのだろうか。

 花婿はまだ登場したばかりなのに。

 手をとったまま、顔を上げた一真は言った。

「だって、つまらないだろう?
 王子様とお姫様が結婚する話なんて」

 そうかな。
 そうだろうか。

 王子様がお姫様と結婚する。

 それは女の子にとって、自分が好きな人と結婚することの象徴的な物語。

 決まりきった、或る意味、平凡なその話が私には涙が出るほど、遠かった。

 一真が身を引き、和歩が側に来る。

 俯いた瑠可はブーケを見つめて言った。

「これは、きっと悪い夢だわ」
「なにが悪い夢だ」

 帰ろうか、などと、和歩は言い出す。

 私になにも言わないまま、話を進めていたので、不安なようだった。

「違うの」
と瑠可は言った。

「なんだか、此処が人生のピークな気がして。

 だったら、このあと、落ちて行くだけじゃない」

 突然、開(ひら)けた目の前が眩しすぎて、逆に不安になる。
 そんな感じだった。
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