わたし、式場予約しました!
 こんな兄が居たら、他の誰も好きになれない。

 こんな人が側に居て、ずっと守ってくれていたら。

 例え、それが、佐野一真でも。

「おにーちゃん、おんぶして」

 は? と和歩が振り返る。

「おんぶして。
 そしたら……」

 その先の言葉は、和歩には聞こえないように言った。

 そしたら……

 貴方を諦めるから。

「しょうがないな」
と呟き、和歩はその場にしゃがんだ。

 少し迷って、その背に乗った。

 和歩は立ち上がろうとして、一瞬、止まった。

「まさか私が重いとか?」

「言ってないぞ、そんなこと」

「佐野先輩なら、重い素振りも見せないような」

「……振り落とすぞ」
と言われたが。

 一真がそうすると思うのは、彼が女性なら誰にでもやさしいからだ。

 ただ、それだけ。
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