愛の言葉を聞きたくて

突然の言葉にルイドは驚いたようだ。目を見開き、そして厳しい表情になる。

「・・・なぜだ?」
「私がオルーフィア様と結婚したのは、跡継ぎを残す為でしょう?もしそれが実現したのなら、もう私は用済みでしょう?」
「子には両方の親が必要だ」
「・・・そこに愛はなくても?」

その言葉にルイドは押し黙る。

「オルーフィア様の心にずっと前の奥様がいることは、知っています。それ故私を愛せない事も。でも私も疲れました。愛される事のない生活、愛のない営み・・・。オルーフィア様も辛いのではないのですか?」
「・・・セルシア、違う。それは違う」
「いいえ、オルーフィア様は辛いはずです。亡き前の奥様にも似ても似つかない私と一緒になり、在りし日の姿を
重ねようとしても出来ない。そんな私とこれから一緒にいても何もいい事などありませんわ」

精一杯の強がり。

そんなのはわかってる。
本当は一緒にいたいの。一緒に過ごしたいの。


ルイドは苦しそうな切なそうな歪んだ表情を浮かべている。
今まで見せたことのない顔。
拳を握り締め、少し震えている。

「・・・わかった」

それだけ言うと、ルイドは部屋を出て行った。

一人になった瞬間に、堰き止めていた防波堤が決壊するように涙が溢れ、零れ落ちる。

あの表情は一体なんだったのか。
私への哀れみ?それとも先に言われた悔しさ?

いずれにせよ、生まれる子次第でもう終わり。愛されないまま終わりなのよ。


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