Last Love
「紗希」
黙ったままでいると、以前みたいに優しく名前を呼ばれる。
もう、私じゃないのに。
隣に私がいてはダメなのに、泣いてすがりたくなる。
だけど、ダメなんだ。
彼はもう、あの子のモノ。
何も言わないのは、彼なりの優しさなのかな。
そんな中途半端な優しさいらないのに。
飽きたなら飽きたで、きっぱり振って欲しかった。
私は、彼の顔を見ずにこくりと頷く。
「そっか……」
何で彼の方が泣きそうな声をしているのだろう。
私が悪いことをしているみたいだ。
泣きたいのは、私なのに。
「もう、勝手にすればいい」
最後は突き放したような言い方をして去って行った。
何でそんな風に言うんだろう。
悪いのは、彼のはずなのに。