Last Love



「もう、降参。紗希は可愛すぎるよ。オレの心を鷲掴みにするし」


「してますか?」


「してる。オレはもう、紗希から離れられないから」



そう言って、触れるだけのキスをする。


それから、それぞれ部署に戻るとそのまま帰る準備をしてフロアを出る。

そこには、和くんが笑顔で待っていた。

そして、自然と手を繋ぎ、会社を出て和くんの家に向かった。

家に行くのは、あの浮気現場を見た時以来。

家に入った瞬間に、あの時のことがフラッシュバックした。

完全に忘れた訳じゃない。

けど、平気だと思っていた。

ここに来て、思い出すとは思わなかった。



「大丈夫だよ」



無意識に手が震えていて、それに気づいた和くんが優しく包み込んでくれる。

そのおかげで、震えは止まった。

私は、思った以上に単純なのかもしれない。

たったこれだけで落ち着くなんて。

その手を引かれたまま、寝室へと入った。




< 46 / 52 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop