Last Love
「もう、降参。紗希は可愛すぎるよ。オレの心を鷲掴みにするし」
「してますか?」
「してる。オレはもう、紗希から離れられないから」
そう言って、触れるだけのキスをする。
それから、それぞれ部署に戻るとそのまま帰る準備をしてフロアを出る。
そこには、和くんが笑顔で待っていた。
そして、自然と手を繋ぎ、会社を出て和くんの家に向かった。
家に行くのは、あの浮気現場を見た時以来。
家に入った瞬間に、あの時のことがフラッシュバックした。
完全に忘れた訳じゃない。
けど、平気だと思っていた。
ここに来て、思い出すとは思わなかった。
「大丈夫だよ」
無意識に手が震えていて、それに気づいた和くんが優しく包み込んでくれる。
そのおかげで、震えは止まった。
私は、思った以上に単純なのかもしれない。
たったこれだけで落ち着くなんて。
その手を引かれたまま、寝室へと入った。