Last Love
あのあと、なぜか電話がかかってきた。
もう話すことはないはずなのにと思いながら出なかった。
それでも、何度か鳴る携帯。
それを見るたびに流れる涙。
そんなに直接別れが言いたいのだろうか。
会社で逢うことはなかった。
彼は忙しい人だし、私は近寄ることさえしなかったから。
でも、たびたび鳴る存在が忘れさせてはくれなかった。
仕事中に鳴らないことが、唯一の救いだろうか。
「だけどさー、たかが言い訳のためにそんなに電話してくる?」
納得がいかない莉彩ちゃんは、不満そうに言う。
そんなの分からない。
人の気持ちなんて分からない。
人と付き合ったのが初めての私には、男の気持ちなんて分からなかった。
あまり考えたくない。
幸せだった頃は消されてしまって、思い出すのは最後のあのシーンだけ。
「もういいよ。終わったことだし。今更あれこれ考えたくない」