≪短編≫群青
「馬鹿が。いつも火遊びしてるみたいなもんだろ。今更、やけど程度で何を騒ぐ?」


比喩じゃなく、ほんとにコンロの近くは危険だと、私は言いたいのだけれど。



押し返そうにも、大雅の体はびくともしない。

この約1年半のうちに、大雅は昔よりずっと背も伸び、腕だって太くなった。


私が力で勝てるはずもない。



「何かわかんねぇけど、機嫌直せよ」


いたずらに言いながら、大雅の右手は私の胸を鷲掴み、左手はショートパンツの中へと進んだ。

私は漏れそうな声をぐっとこらえ、



「やめて。昨日、2回もヤッたじゃん。痛いよ。やだ」

「嫌? そのわりには、もう濡れてるみたいだけど」

「やっ」


慌てて口を押さえたが、うなじに大雅の唇が触れ、体はわかりやすい反応を示す。

もちろん大雅がそれを見逃すはずもない。



「どうしてほしい?」


耳元に落とされた大雅の問い。

結局、私は、この男にも、自分の欲望にも、一度も勝てやしないのだから。



「大雅の、ちょうだい」


上擦った息のまま言った瞬間、大雅のモノが後ろから打ち込まれた。

大雅はクッと笑いながら、



「お前さぁ、こういう時だけは素直で可愛いよなぁ」


うるさい。

『こういう時だけは』って何よ。


言いたかったのに、それは次第に白濁していき、代わりに漏れるのは、こらえきれなくなった喘ぎばかり。



鍋の味噌汁は、ぐつぐつと音を立てて沸騰していた。

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