≪短編≫群青
シャワーを浴び、食卓で、私の作った味噌汁をすする大雅。
向かいの席で頬杖をつき、そんな大雅を眺めながら私は、何とも言えない気持ちになった。
あまりにも眺めていたからか、ふと私の視線に気付いた大雅は、
「何? 俺の顔に何かついてる?」
「別に」
切れ長の目。
精悍な顔立ち。
椀を持つ筋張った長い指。
他にいくらでも女がいるくせに。
「そんなに俺のこと見つめてどうすんだか」
「自意識過剰だから、それ」
私はため息を吐く。
「これから1年、同じクラスなんだと思うと、ほんと憂鬱」
「失礼なやつめ。俺と同じクラスになりたかった女なんて山ほどいるってのに」
「じゃあ、今からでも、喜んでその子たちと変わってあげる」
「そうだな。そうしてくれるとありがたい」
あぁ、もう、ほんとムカつく。
私の嫌味など、いつもこうして涼しい顔で流されるのだから。
私はふてくされて、席を立った。
「私、もう寝るから。あんたは帰るなり泊まるなり、好きにすれば」
「泊まっていいのか?」
「ダメって言ってもどうせ聞かないでしょ」
言って、私は大雅に背を向け、ひとり自室に向かった。