≪短編≫群青
私たちは、傍から見ればただのクラスメイトでしかない。

だから、喋ることもなかったし、今までそれで上手くやれてたのに。


なのに、こいつは席が隣になって早々、何を考えているのやら。



「おい、大雅。長谷川さんにちょっかい出すなよ。可哀想だろ」


顔を向けると、同じく移動してきた私の右隣の席の主である茶髪が、なぜか怒った顔をしていた。

大雅の友達の、確か、名前は園山くん。



「ごめんなぁ、長谷川さん。こいつ、女に対していつもこうなんだよ」


知ってます。

とは、言わないでおく。


園山くんは取り繕いながらも、



「ったく。大雅、聞いてんのかよ。前から思ってたけど、お前、見境なさ過ぎるぞ」

「うるせぇなぁ」

「大体、北女の子はどうしたんだよ。お前と連絡取れなくなったって俺が文句言われてんだぞ。どうにかしろよ」

「知るかよ、あんなブス」

「はぁ? お前がその『ブス』とヤッたからこうなってんだろ」


あぁ、もう、ほんとにイライラする。



園山くんが仲裁してくれたところまではよかった。

けど、結局、大声で、話がこういう方に行っているのだから、無駄にクラスメイトたちからの視線が集まるわけで。


みんなはこちらを見ながら怪訝にひそひそと話し、近付いてもくれない。



挙句、



「こら! 長谷川、園山、桐原! お前ら、いい加減にしろ!」


担任にまで怒鳴られ、巻き添えを食らった形の私は、もはや泣きそうだった。

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