≪短編≫群青


昼休み。

未だ怒りが治まらず、学食で、定食の中に入れられたピーマンを箸で突き刺した私に萌は、



「綾菜ちゃーん。そんな顔してたら美人が台無しだよー?」


と、横から笑う。

私は、串刺しにしたピーマンを憎々しく咀嚼しながら、



「だって、あんな席になって普通にしてろって方が無理でしょ」

「ほんと、綾菜ちゃん、くじ運ないよねぇ」

「右も左もチャラ男だし! てか、何で私まで怒られなきゃならないの?!」

「あはは。ご愁傷さまー」


相変わらず、萌は笑うだけ。

私は諦めて肩をすくめ、



「他人事みたいに言ってくれちゃってさぁ」

「しょうがないじゃん。実際、どうしてあげることもできないし。文句があるなら担任に言いなよ」

「言ったよ。でも、聞く耳持ってくれなかった」

「うん。だからもう、綾菜ちゃんが我慢するしかないんだよ」


ほんと、自分のことじゃないからって、冷たいもんだ。



後味まで苦いピーマン。

不味いと思いながらも食べてしまう自分。


それが大雅との関係みたいで、だから余計に憎々しく口内で噛み砕く。



「こんなの、生け贄じゃん」


そう。

結局、私は、大雅の生け贄でしかないのだ。


言葉にしてみたら、何だか悲しくなってきて、私は喉に詰まりそうだったピーマンをごくりと飲み込んだ。



「相当、ストレス溜まってるみたいだねぇ」


萌は困った顔をしながら、
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