≪短編≫群青
「私はあんたの都合のいい道具じゃないんだよ」


ため息を吐く私。

大雅はそんな私の手を取って、



「そういう風に言ってるわけじゃねぇだろ。何、卑屈なこと言ってんの?」


指の先が絡められる。

酒の所為なのか、そこから、いつもよりも大雅の熱を感じさせられる。


恋人同士みたいで嫌だ。



「とにかく、私のことは置いとくとして。マジで、何でカノジョ作ろうとしないの?」

「………」

「いっぱい女の子と遊んでるじゃん。その中には、大雅のこと好きで、本気で付き合いたいと思ってる子だっていたんじゃない? 北女の子にしてもそうだけどさ」

「………」

「なのに、大雅は誰かを好きになったりだとか、今まで一度もそういう気持ちになったことないの?」

「ねぇよ」


冷たく吐き捨てるように言った大雅。



「俺、愛とかそういうの、信じてないから」


これにはさすがの私も驚いた。

「え?」と、思わず声を漏らしてしまった私に大雅は、



「うちの両親、昔は普通に仲よかったけど、俺が中学入った頃くらいから、徐々にすれ違いとかで喧嘩ばっかになって。あれ見てたら嫌になった」

「……でも、そういう家庭ばっかじゃないし……」

「お前んちだって離婚してんじゃん。愛し合って結婚したとか偉そうに言ったって、結局は、どうせいつか冷めて壊れるもんだろ? だったらめんどくせぇじゃん」


私の反論の言葉は、それ以上、出てこなかった。

悲しいけれど、大雅の言うことも一理あると思ってしまったから。



絡んだままの指の先。

でも、そこには何の感情もないと言われているみたいで。
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