≪短編≫群青
「俺は綾菜のこと嫌いじゃないし、普通に好きだよ。一緒にいて楽だとも思ってる。じゃなきゃ、どんなに便利なだけだったとしても、こんなこと続けてねぇし」

「………」

「それでいいじゃん。つーか、それ以上の何が必要?」

「………」

「それにお前だって、何だかんだ文句言ってても、結局は俺とこうやっているじゃん。それってこの関係で十分ってことだろ」


勝手なことを言って、勝手に私の気持ちまで決め付けて。

大雅は卑怯だ。


私がイエスだと言えば続くし、ノーだと言えば終わるだけの、この関係。



私は、結局、どちらとも言えないまま、顔を伏せた。



すると、何を思ったのか、突然、目を開け、むくりと上体を起こした大雅。


大雅は、未だ絡まったままの私の指をぺろりと舐め、目を細める。

いきなりのことに驚き、私は戸惑うままに「何?」と問うたのだが。



「『何?』じゃねぇよ。誰かさんがくだらねぇこと喋らせる所為で、寝る気が失せたし。どうしてくれんの」

「そんなの」


言い掛けたが、今度はもう喋るなとばかりに口を塞ぐようなキスをされた。


大雅の熱い舌。

私の息まで熱くなる。



ノーではないことは明らかで。



「大雅」

「ん?」

「今日、優しくして」


自分でも、どうしてそんなことを口走ってしまったのかと思う。

でも、大雅の酒の匂いにあてられたのだと、私は自らに言い聞かせた。


大雅は伏し目がちにふっと笑い、



「馬鹿が」
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