≪短編≫群青
chapter 4
「もう二度と教室で馬鹿みたいなことを話し掛けてこないで」と、忠告しておいたからか、隣の席でも大雅が私にちょっかいを出してくることはなくなった。
「約束を守れないなら二度とうちには上がらせない」と、釘を差したのが効いたのかもしれないけれど。
そして、日曜日。
北女の子の誕生日でもある、今日。
大雅が会いに行くのかどうかは知らないけれど。
「綾菜ちゃん。ほんとに、ほんとに、大丈夫なの?」
私は、ここのところの朝晩の寒暖差にやられ、見事に熱を出してしまった。
「やっぱりママ、行くの止めようかしら。綾菜ちゃんのことが心配だし」
ママは今日、泊まりで遠方の親戚の家に行くことになっている。
ずいぶん前から入っていた予定なのだが、帰りが翌日になることもあり、熱の出た私のために、行かないとまで言い出したのだ。
が、さすがにそれは、私の方が申し訳なく思ってしまう。
「何言ってんのよ、ママ。叔母さんたちに会えるの、ずっと楽しみにしてたじゃない」
「それはそうだけど。でも、熱のある綾菜ちゃんひとり残して行くなんて」
「大丈夫だってば。何度も言ってるじゃん。私だってもう子供じゃないんだし。それに、いざとなったらタクシー呼んで病院に行くから」
「うーん」
「ほら、新幹線の時間に遅れちゃうよ」
現時点で、私の熱は37,8度。
これくらいなら平気だからと、私は渋るママの背中を押した。
ママはあまり納得していないようだったが、時計を見て、仕方がなさそうに、キャリーバッグを手に玄関へと向かう。
「じゃあ、ママ、行くけど。本当の、本当に、何かあったら電話してきてね? ママ、飛んで帰ってくるから」
「わかったってば。お土産よろしくー」
私はママを送り出し、やっと息をついた。