≪短編≫群青
「酒、飲み足りなくね?」

「えー?」

「俺、そこのコンビニで買ってくるから」

「私、眠いんですけど」

「よし、わかった。だったら特別に、お前の好きなもんも奢る」

「マジで?」


熱帯夜。

暑くて無性にアイスが食べたかった。


眠気とアイスを天秤に掛け、当時、酔っ払った男を家に上げるという危機感すら皆無だった私は、どうせ暑くて眠れないだろうからと、アイスを選んだのだ。



「ガリガリくんのコーラ味」


声高らかに私が言うと、大雅は「任せとけ」と笑った。




それから、私が先に家に入り、5分後、コンビニで色々と買い込んだ大雅がやってきた。


大雅はチューハイを飲み、私はガリガリくんを食べる。

その間も、クラスの誰々が馬鹿をやっただとか、担任がムカつくだとかいう話で盛り上がった。



楽しいという気持ちしかなかった。



そして、気付けば時計の針は深夜1時を過ぎた頃を差していた。

眠気と、暑さと、静けさと、酒の入った男と女。


どちらがどうなってそうなったのかはもう覚えていないが、私と大雅は、徐々に汗ばんだ体の距離を詰め、変な遊びをし始めた。




初めてのキス。

初めての行為。




大雅のことは知らないが、私のは完全なる好奇心だった。


テレビや漫画で見たような、大人ぶったこと。

そういうことをしてみたいという欲求が、酒の力で解き放たれたのかもしれない。

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