≪短編≫群青
「病院、行くか?」


問われたが、私は枕に顔をうずめたまま、ふるふると首を振った。



「じゃあ、市販のだけど、薬買っといたから、飲め」

「……ん」

「つーか、顔出せよ。こっち向け。息できなくて苦しいだろ? それじゃあ、薬も飲めねぇし」


言いながら、大雅は力の入らない私の体を、無理やり起こすように抱き上げた。


汗なのか、涙なのか、それともその両方なのか。

ぐちゃぐちゃになった私の顔を改めて見た大雅は、



「普段の強気はどこに行ったんだか」


と、ふっと笑った。


うるさい。

と、言いたかったが、もはや喋ることもままならない私は、倒れ込むように大雅の体に頭を預けた。



「何? 甘えてんの? もしかして熱で心細くなってたか?」


大雅は、だからって、笑うだけ。



「ったく。しょうがねぇやつだなぁ。今日だけだぞ。ほら」


私の背中を左手でさすりながら、右手だけで器用に買いもの袋から飲みものを取り出す。

私の口を開けさせた大雅は、それを流し込んでくれた。


ひんやりとしたものが喉を通る。



「って、こぼすなよ。ガキかよ、お前は」


大雅はまた笑い、私の口元から伝い漏れたそれを、ぺろりと舐め上げた。


自分よりも体温の低い大雅の舌。

冷たささえ感じ、その気持ちのよさに、体がぞくりと震えた。



「すげぇな。とろーんとして。今のお前、欲情してるみたいに見えるよ」


大雅はそのまま、私にキスをする。
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